Client Voice レンタル事業DX データ活用で介護レンタル事業を大幅改善 datarisチームによるDX支援でデータを見える化 データドリブンでレンタル原価率を低減し、数億レベルの体質改善を実現!
1946年の創業以来、布団文化だった日本にベッド文化を作り上げてきたフランスベッド株式会社は、初代社長が日本の家庭向けベッドの普及に尽力し、欧米のインテリア文化やライフスタイルを広めたインテリア事業と、2代目の現社長が国と連携し、介護保険を利用した福祉用具貸与(レンタル)を普及させたメディカル事業が同社の主な事業である。
メディカル事業は、1983年に療養ベッドの家庭向けレンタルを開始した後、国と連携して今の介護保険の対象となる環境を構築。現在では自社のベッドのみならず、車いすや手すり、歩行器などの福祉用具を事業者や個人相手にレンタルや販売をしており、同社の重要な事業の柱となっている。
レンタル事業ならではの複雑なビジネスモデルが、原価率を上昇
東京都小平市にある「フランスベッド メディカレント東京」は、レンタル事業を運営するメディカル事業本部と都内全域の福祉用具レンタル商品のメンテナンスを行うサービスセンターが併設されており、福祉用具の洗浄・消毒・メンテナンスだけでなく、倉庫を含む配送拠点や東京地区の業務を集約するセンター機能も持つ、全国21箇所あるメンテナンスセンターの中でも、まさにメディカル事業の中心拠点となっています。
製造して販売する売り切り型のビジネスとは異なり、レンタルビジネスの場合は、「貸出→返却→メンテナンス→貸出」のサイクルをいかに迅速に行うかが収益を大きく左右します。メンテナンスに時間が掛かっていると、貸出に間に合わないため新品をレンタル品として投下する必要がでてくるため、原価率が上がってしまいます。
「製品を販売ではなくレンタルとして投下することは、在庫も増え、レンタルの原価率も上がります。レンタルビジネスでの月額利用料は決して高くないので、レンタル原価率が上がると、利益をあっという間に圧迫してしまうんです」(黒須様)
フランスベッドでは、過去5年でレンタル商品の仕入れ価格の高騰や、在庫数の増加によりレンタル事業の原価率が上がったことをきっかけに、ビッグデータの分析により、レンタル原価率と過剰在庫を改善する目的で2021年10月にメディカルDX推進室(現・DX購買課)が立ち上がりました。
フランスベッド社内で、情シス部門や広告、宣伝やマーケや商品などの企画部門など幅広い経験と知識を持つ黒須様を筆頭に、旧基幹システムの立ち上げから携わり、メディカル部門での現場業務や基幹システム立ち上げの経験を持つ豊嶋様、購買・仕入れなどの商品業務部門として、このレンタル原価率の上昇を抑える施策を推進していた鈴木様といったメンバー構成で原価率を下げるプロジェクトがスタートしました。
社内システムにあるビッグデータの活用で、事業改善への活路を拓く
フランスベッド社内で、2017年より同社独自の基幹システム「HPNS(ハピネス)」により、顧客データや売上データ、仕入れデータを管理していました。このビッグデータの分析により、レンタル原価率と過剰在庫を改善することがメディカルDX推進室の使命でした。
「近年、仕入れ価格自体は上がっていたので、まとめて購入して、仕入れ値を下げようとしていました。加えて、HPNSのデータを活用し、仕入れやレンタルを分析し、適正な発注数を決めていく必要がありました」(鈴木様)
それまでの各センターでの在庫品の発注は、HPNSシステムである程度目安はわかるものの、大半は各センターの発注担当の経験と勘によるものでした。センター長の判断に委ねられていたので全国的には在庫が多い商品を、特定のエリアでは新規に発注してしまうといったことも起きていました。
「たとえば、冬は雪が降るので、北陸や東北では屋外用の歩行器や車いすが返品されます。そのような地域性ある在庫管理を、あくまで経験と勘に頼っていました。経験や勘は素晴らしい成果をもたらすこともありますが、メディカルDX購買課としてはまずは商品動態を把握し、データの力を用いた発注支援をやりたいと考えていました。」(豊嶋様)
しかし、基幹システムのデータは数百万件におよび、1つ1つの商品に振られたシリアル番号とお客さまを関連付け、日々変化する商品の動態を管理するには膨大な時間とマンパワーが必要だという結論に至りました。
データ・AI活用のエキスパートとしてARIをパートナーに選定
ARIでは、BXデザイナー(ビジネストランスフォーメーションデザイナー)として、これまでも様々な業界のお客様の創造的なビジネスゴールの実現を支援しています。データ・AI活用においては、dataris(デタリス)というサービスブランドを展開しています。今回、ご縁があり当プロジェクトをARIがお手伝いすることになりました。
datarisチームは、まずはサンプルデータを分析しつつ、データドリブンでビジネスゴールの整理・設定をしたうえで、そこに向けた課題を洗い出し、ビジネスインパクト(売上貢献、コスト削減)を試算した上で優先順位を決めることを提案しました。
具体的にはモデルとなるセンターにある商品のシリアル番号と顧客コードを元に商品動態を追いながら、稼働率や在庫をモニタリング。同時に、今現場で求められているデータを、BIツールのTableauで可視化できるように支援しました。
「社内でどんな問題が起こっているか、どう改善すればよいかは理解していたのですが、データとリンクさせるところがうまくできませんでした。ARIさんには在庫数、メンテナンス状態、年間に出荷した数、戻ってきた数などを分析してもらい、業務を効率化して、さらに発注すべき商品はどれなのかを見られるようにサポートいただきました」(豊嶋様)
また、社内で実データをTableauで活用できるよう、内製化に向けた勉強会もARIが主導で実施しました。
「Tableauは独自の用語もあるので、私の様なもともとシステム部門にいた事がない人にとっては、ハードルが高かったです。それをARIさんに、それまでExcelでやっていたことをTableauでできるように、自ら手を動かして学ぶ機会を作ってもらいました。それがとてもありがたかったです」(鈴木様)
当初、Excelの関数を駆使して管理していた商品動態を、Tableauを用いることで、知りたいデータをピンポイントで把握することができるようになり、過剰在庫の把握や仕入れの適正化がスムーズになりました。今後は従来からの課題だった基幹システムからのデータ入手に関しても、「Tableau Bridge」を導入することで迅速になる見込みです。
データドリブン経営をさらに進化させ、攻めのDXへ!
現在では全国のセンターの情報を統括し、データ分析に基づいた在庫数・受注数の管理だけでなく、メンテナンスの順位付けや、仕入れ数の最適化により、在庫過多にならないようにコントロールできるようになりました。ARIがビジネスフローをよく理解し、データ分析体制の構築と作戦の立案に寄与した事で、仕入れと在庫の最適化により、億単位での効果が出ています。
「豊嶋、鈴木の2人はメディカル事業の業務の流れに精通しています。彼女たちが『こうしたらよくなる』と考えた企画や施策をチューニングし続けた結果、今まで誰もメスを入れることが出来なかった在庫の削減や、経営陣が求めていたレンタル原価率の低減につなげることができ、大きな成果を出すことができました。本当にすごいことですよ」(黒須様)
また、datarisチームが分析を始めた当初は、レンタル事業の原価率改善のカギは、仕入れと在庫だと思われていましたが、ビジネスモデルを理解することで本当に介入しなければならないのは、メンテナンスの優先順位だということが分かりました。在庫と発注状況を見ながら、メンテナンスする商品の優先順位をつけて在庫化する必要があったのです。今後は、売れ行きデータをもとに、どこに介入すれば、もっともインパクトが出るのかを、AIを使った機械学習により需要予測を行うことで適正在庫モデルを構築、検証する予定です。
さらに、これまで仕入れ、適正在庫、メンテナンスの優先順位付けと、いわば「守りのDX」を進めていたフランスベッド様では、今後は、データをより活用することで営業や製品開発などに活きる「攻めのDX」に進んでいく予定です。在庫の観点や会社の戦略に基づいたリコメンドを行なえるようになれば、新入社員でもデータに基づいた信頼性の高い営業が可能になります。
「ご利用者様の年齢や、身体状況、介護度などの情報を入力すると、『こういうベッドや車いすが最適ですよ』と、新入社員でも堂々とケアマネジャーにお勧めできる。そんな営業スキルの平準化をDXで実現したいですね。」(黒須様)
フランスベッド様のDXをARIは引き続き支援してまいります。