Client Voice 1万店のサロンが使うECサイトをアジャイル&モダン開発で刷新

株式会社MASSホールディングス様

株式会社MASSホールディングスは1948年創業の理美容専門商社「きくや美粧堂」の親会社として、2006年に設立されました。同社のサプライチェーンやIT・マーケティングなどを統括し、シャンプーやカラー剤をはじめ、シャンプー台などに至るまで、幅広い商材の仕入・供給を司っています。強みは、国内3か所の倉庫を持ち、独自の物流ネットワークを構築していること。また、自社IT部門でシステム開発を行うことで、顧客の幅広いニーズに応えるサービスを提供しています。

UIへの不満や保守運用の課題から、クラウドを使ったモダナイズを検討

今回、MASSホールディングスがARIとともに改善に取り組んだのは、サロン向けのシステム「Altair(アルタイル)」。約10万点の商材から発注ができるECサイト、そしてレジの管理ができるPOSシステムとして、全国約1万店舗が利用する無料のサービスです。同社がAltairのモダナイゼーションを検討しはじめたのは2021年。当時のシステムは導入から8年以上が経過していました。

「フレームワークが古くなってしまい、他社のツールと比較しても『ひと昔前』のUIになっていました。また、当時開発に携わった協力会社の責任者はすでに退職。システムを細部まで把握したうえで保守・運用できる状況ではありませんでした。セキュリティの観点からも、インフラからフレームワークまで、モダナイゼーションしたいと考えていました」(畠山氏)

条件は、Altairを無料で提供し続けるため、従来のオンプレミス環境を維持してコストを抑えること。そのうえでクラウドサービスを活用してシステムをモダン化する方向で検討を進めました。そこで相談したのが、AWSの豊富な知見を持つARIでした。

「今回はAWSのサービスを使い、1からシステムを立ち上げ直そうとしていました。ARIからは、モダンなツールを使ったアジャイル的な開発手法を提案してもらえましたし、プロジェクトマネジメントに携わって相談に乗ってくれるということだったので、お手伝いいただくことにしました」(畠山氏)

多彩なツールを駆使して、さまざまな課題解決にアプローチ

まずインフラ面では、ARIのアドバイスにより、フロントエンド側にAWSを導入。システムの冗長性を担保しながら、サーバーサイド側は従来のオンプレミス環境を維持ししました。また、CI/CDパイプラインも構築。OAS(OpenAPI Specificationの略)エコシステムを利用したAPI定義とコード生成、E2E(End to End の略。ユーザの視点で、システム全体が想定通り動作しているか検証すること)によるテストの自動化を実施しました。

「テストの自動化は大きな前進です。E2Eで品質の担保ができるようになりましたし、保守メンテナンスやシステムのアップデートは以前よりだいぶ楽になったと思います。以前は修正ファイルをサーバーにアップロード後、場合によっては再起動を行う必要がありましたが、今はGitHub上で本番用のソースコードをUpすると自動的にデプロイまで行えます。また、従来はデプロイ中にセッションが切れてサービスが止まる可能性があったので、サロン様の閑散期に作業していましたが、その心配はなくなり、日中帯でもちょっとした修正ならできるようになりました」(寿山氏)

あまりメンテナンスされてこなかったドキュメントの整理も実施。以前はExcelを用いる部分がありましたが、GitHubのWikiを使うことに。ARIの担当者が業務内容を整理したうえで、Markdown記法でドキュメントを更新しました。

「Excelなどと異なり、テキストファイルなので差分が見られるのが良いですね。システム構成図も、今までは図形をつくって組み入れていたので、個人のセンスによるところが大きかった。コード化して図形を描写できるようになり、作業の平準化ができるようになりました」(風穴氏)

UIの設計にもモダンな手法が用いられました。ARI側のデザイナーがFigmaを使ってモックアップを制作し、StorybookでUI部品を管理しました。プロトタイプベースで方向性を定めながら、効率的にUIをつくりこんでいくことができました。

「Figmaはスピーディーに精緻なデザインを作成可能。以前はホワイトボードに手書きしたイメージをもとにUIを固めていくしかなかったのですが、今回はリアリティのあるデザインを見ながら、サロン様の視点で議論できました。例えば、カラー剤の注文画面には画像を入れられるようにして、サロン様は色味を確認しながら注文できるよう改修しました」(畠山氏)

スクラム開発が奏効 2週間ごとのスプリントでタスクが明確に

こうした施策を効率的に実行するためにARIが提案したのは、スクラムを採用したアジャイル開発。ARIのスクラムマスターとメンバーが、MASSホールディングスと連携してスプリントごとに開発を進めていきました。

「これまでも、工数を減らして開発効率を上げる取り組みはしていましたが、本格的なスクラム開発は初めて。2週間ごとのスプリントレビューでタスクを整理できますし、概ねうまくいっていると思います」(寿山氏)

「以前は長いスパンでやるべきタスクが積み上がっていたので、進捗がいまいち把握できない面がありました。スクラム開発は2週間ごとに明確なゴールがあり、スケジュールが見えやすいし、手戻りも少ない。サクサク進んでいる感触がありましたね。適度なプレッシャーもあって、開発のモチベーションを高い状態で維持できたと思います。また、ARIとは2年ほどご一緒していますが、メンバーの入れ替わりや当社からの要望に対応し、適宜体制をリビルドしてくれたのは助かりました」(畠山氏)

スクラムを生かしたAltair改修を通して、MASSホールディングスの社内ではさまざまな効果が出ています。一つは、管理・運用の改善。これまでは、社内向けの管理画面には最低限の機能だけが用意されており、ある程度データベースの知識がないと操作できない状況でした。今回は、ITの知識に乏しい事務担当者でも運用できる仕様に変更。運用の属人化を解消できました。

「もう一つは、FAX受注の削減です。FAXによる発注書は、営業担当者などがシステムに手作業でパンチしていました。Altair普及によってこの工数を減らせば、必然的に営業活動に使える時間が増えます。Altairがリリースされた10年ほど前との比較にはなりますが、FAX受注は全体で40%以上削減。支店によっては90%に達しています。今回の改修の効果が見えてくるのはもう少し先ですが、さらなる追い風になることを期待しています」(畠山氏)

ARIの開発力とデザイン力のバランスに高評価 業務理解の深さにも安心感

ARIとの取り組みに満足しているというMASSホールディングス。どのような点に好印象を持たれたのでしょうか。

「ARIを選んで良かった点の一つは、AWSの活用です。こちらに知見がなかったので、ARI担当者に構成を含めて検討してくれたので助かりました。オンプレミスとの『ハイブリッド』で導入したいという私たちの意図を汲み取り、業務内容もきちんと整理して理解していただけたので、安心して施策に取り組めました。デザインも満足しています。『開発会社はデザインに弱い』という先入観を持っていたのですが、ARIはそのバランスがとても良いですよね」(畠山氏)

2023 年からは第2フェーズとして、サロンからのニーズも大きい請求書DL機能の開発をスタート。ARIの支援が続いています。

「当社は代表が三代目になり、『第二の創業期』を迎えています。その中で、Altairの機能強化はもちろん、全国のサロンにフルサービスを届ける『MiCOL』の普及にも取り組みます。これからもARIの力を借りながら、さまざまな施策にトライしていきたいと思っています」(畠山氏)

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