Client Voice 新時代を迎えた音楽ビジネスに、BI・データ活用したデータ・ドリブンマーケティングで挑む
近年の音楽業界ではデータに基づいたマーケティング施策が不可欠
近年、音楽業界は定額制(サブスクリプション型)音楽配信サービス市場の成長に伴い、CDの製造販売を前提とした事業スタイルから、デジタル配信を主とした事業スタイルへとシフトを遂げています。
「CDやダウンロード型は発売直後に売上のピークを迎え、数字は徐々に下がっていくのが一般的です。一方、定額制(サブスクリプション型)音楽配信サービスは継続的に利用してもらうために、CD販売とは別の施策が必要になります」と語るのは、株式会社スペースシャワーネットワーク マーケティング部の平田氏です。
音楽配信サービスの各プラットフォーム上ではユーザーの「属性」、「国別や時間帯別などの再生数」、「流入元」など多種多様なデータが記録されており、これらのデータを収集・分析してマーケティング施策に活かすことが明確な数値の裏付けがあるデータドリブンマーケティングを実践することとなります。
以前はそれぞれのプラットフォームから必要なデータをCSVファイルに書き出しExcel上でまとめたレポートを作成していました。
しかし、この作業は非常に手間がかかり、分析から施策実行に至るまでにタイムラグが生じてしまっていたと言います。
トレンドの変化やユーザーのニーズに、よりスピーディーに対応するためにはツールの利用が不可欠だと考え、様々なBIツールの情報収集を行い「今の私達にとって最適なツール」としてクラウド型BIツール「Domo」を選択するに至ったそうです。
Domoによって進むデータ活用、その一方で新たな課題も発生
実際にDomoの導入によって得られた効果としては、大きく以下の3つが挙げられるとのことです。
・作業効率の向上:単純な集計作業のボリュームが50%減少した
・数値意識の向上:ロングテールを意識した戦略思考が徐々に定着。その結果、売上が15%向上した
・共有とアクションスピードの改善:Domoのチャット機能”BUZZ”をつかったコミュニケーションで個人の気づきがチームに広がり、素早いアクションへとつながりやすくなった
このように、着実にデータドリブンマーケティングの実践に近づいていた同社でしたが、一つ大きな問題が立ちはだかりました。
同社が楽曲をディストリビューションしている大手ストリーミングプラットフォーム「Spotify」から、必要な情報が収集できないという点です。
「Spotifyが提供している管理ツールはアーティストや楽曲ごとにしかデータを出力できず、弊社の取扱楽曲すべてのデータを毎日出力するのは困難な状況でした。そこで、Spotifyが別途提供しているAPI機能を利用する為、取扱楽曲のデータを抽出できるようAPI連携ツールの開発を検討することになりました」同社マーケティング部の櫻井氏は当時を振り返ります。
Domoの知識が豊富なARIに開発を依頼
API連携ツールの開発を依頼するベンダーを検討する際、平田氏の脳裏に真っ先に浮かんだのがARアドバンストテクノロジ株式会社(ARI)だったそうです。
「ARIさんはDomoのパートナー企業だったので、導入時にコンサルとしてプロジェクトに参加いただいていました。その時にいろいろ話を伺っていて、Domoに関する知識、経験が豊富だったこともありますが、担当者の人柄が親しみやすく相談しやすかった、ということもあります」(平田氏)
相談を続けていくうちにAPI連携ツールの開発が具体化し、2020年5月から開発がスタート。そして同年9月に完成したとのことです。
「今回の開発では、Domoへ様々なデータを集約させる為、Spotify以外にも、元々APIを提供していた音楽ストリーミングのデータ分析ツールである『Chartmetric』やライブ会場でのグッズなどの決済に利用していた『スマレジ』との連携もお願いし、汎用的に設計していただきました。コロナ禍でライブ自体がなくなってしまったので、スマレジとの連携は使う機会がほとんどありませんでしたが、今後ライブの開催状況を見ながら使っていけるようになれば嬉しいです」(櫻井氏)
また同社は、グローバルデジタルミュージックディストリビューターである「FUGA」(オランダ/アムステルダム)との間で、2020年12月15日に合弁会社「SPACE SHOWER FUGA」を設立し2021年9月1日より、正式にサービスの提供を開始しています。
この新たな合弁会社の設立に対応するため、2021年5月にもAPIの追加開発が行われました。
「ARIさんの印象は、とにかく対応が速いということです。修正のお願いをすると、すぐに返事が来て、こちらが考えていた以上のスピードで対応してもらえました。また、要件が固まっていない状況でも、仕様をARIさん内部で確認して提案してきてくれたことも、依頼する側としては進めやすかったです」(櫻井氏)
音楽業界にデータドリブンを浸透させるため、知識の蓄積と共有を期待
Domoを導入して3年が経過した同社では、社内そして社外で発生した様々な変化に対応しながら、データドリブンマーケティング実践への取り組みが本格化しつつあります。
平田氏は、自社はもちろん音楽業界全体が活性化するためにも、データドリブンマーケティングの普及が不可欠だと感じるようになったそうです。
「業界内でいろいろ話を伺ってみると、私達が経験したような各サービスやプラットフォーム間でのデータ連携の問題に直面している方々が非常に多いようです。ARIさんには私達だけではなく音楽業界全体に知識や経験をフィードバックして頂きたいです。そうなれば、もっと日本の音楽業界は活性化されて、国内のいろんなアーティストやクリエイターが世界中で活躍できる環境になるはずです。これからもご活躍を期待しています」(平田氏)
※取材当日は新型コロナウイルス感染予防対策として、写真撮影時のみマスクを外し短時間での撮影を行っています。