Client Voice 国際的な日本文化発信サイト構築をARIが支援 海外に通用するUI/UXに改善し、大幅なアクセス増を実現
独立行政法人国際交流基金
1972年に特殊法人として設立された、総合的な国際文化交流を進める専門機関。2003年に外務省所管の独立行政法人として改組され、現在に至る。事業は、国外における日本語教育環境を整える「日本語教育」、国外の日本研究者の支援や交流の促進を行う「知的交流・日本研究」、それに、舞台芸術や造形美術、映画などを幅広く世界の人々に向けて紹介する「文化芸術交流事業」の3つを柱としている。
日本の映画文化を海外へ発信するイベントサイト UI/UX強化が必要だった
国際交流基金様はこれまで、文化芸術交流事業の一環として、世界各国で日本映画を訴求する施策を展開してきました。2022年には、コロナ禍ということもあり「JFF+ INDEPENDENT CINEMA」として、日本の映画文化の根幹を支えるミニシアターを紹介しつつインディペンデント映画を配信するイベントがオンライン開催されました。その第二弾として2023年、「JFF+ INDEPENDENT CINEMA 2023」の開催が決定しました。
「前回はミニシアター文化を牽引してきた歴史の長い映画館を取り上げましたが、今回スポットを当てたかったのは主として2000年代以降に生まれた比較的新しいミニシアター。前回とは異なる特設ページを、英語と日本語で構築することになりました」
こう振り返るのは、同法人の玄田氏。業務委託先の選定は、おもに価格で落札者を決める「一般競争入札」ではなく、各社からの提案内容を評価する「企画競争入札(プロポーザル方式)」で実施することになりました。
「前回の6か月間と比べ、今回は3か月という短い開催期間でユーザに訴求する必要がありました。そのためには、使い勝手や見やすさ、デザイン性など、UI/UXの部分を強化しなければなりませんが、私たちは専門的なノウハウを持っていません。柔軟に対応してもらえる委託企業に、さまざまな提案をいただきながら仕様を決めていくことが望ましいと考え、企画競争入札を実施しました」(玄田氏)
2023年春に実施された企画競争入札では、公告された仕様書に提示された条件をもとに参加各社がプレゼンを実施しました。最終的にARIが契約を締結し、同年5月から特設サイト構築が始まりました。
事業コンセプトへの深い理解と共感でARIが伴走 デザイン先行でサイトを構築
特設サイトはCMSで構築し、8月に公開するスケジュール。シンプルで使いやすく、ブラウザを通して映画館のような雰囲気を感じられるサイトが目指されました。
「日本人向けのサイトなら、多少複雑であっても情報は伝わります。しかし今回は、英語をメインにした世界の人に見てもらうもの。海外のユーザは日本人よりも離脱しやすい傾向にあるため、直感的に操作できるウェブサイトになるようARIに依頼しました。納期が短いプロジェクトにも関わらず、ARIにはそうしたこちらのコンセプトや意図を酌んで伴走していただけたと思います」(玄田氏)
プロジェクト進行にあたってARIは、早い段階からデザイン素案を展開。その場で受けたフィードバックをすぐに反映させ、改善案を提示してブラッシュアップを重ねていきました。
「ウェブサイトは後ろに複雑な構造があるでしょうが、その点については私たちは素人。ユーザ目線でデザインを一緒に見ながら議論する形をつくっていただき、どんなサイトになるかというイメージを浮かべながら進められました。議論しやすいように、専門的な言葉をできるだけ噛み砕いて説明していただいた点も助かりました。
今回は英語と日本語のマルチサイトでしたが、コンテンツの翻訳を外注ではなくインハウスで対応してくれたので、柔軟で助かりました。変更・修正も含めてスピーディーな進行だったと思います」(玄田氏)
「それに、私たちは大まかなデザインの方向性について決めてはいきますが、『クリックすると色が変わる』などの挙動までは考えつきません。ARIにはそうした細かい動きも考慮していただきながら、違和感のないウェブサイトを作れたと思います」(小野氏)
また玄田氏は、今回の施策の最大の目的でもあった「地域のミニシアターとともにあるインディペンデント映画を取り上げる」という企画の意義を理解し、共感を持って取り組む姿勢がARIにはあったといいます。
「私たちがやろうとしていることに『思い』を持って取り組んでいただけるかは、とても大事です。こちらが言ったことを忠実にこなすスタンスの企業もある中、ARIはこの企画のねらいに共感を持ち、『こうしたほうがわかりやすいですよ』『こんな形なら伝わると思います』といった提案をしてくれました。同じ方向を向いて、同じ思いで議論をしながら進められたのが、ありがたかったです」(玄田氏)
「そうですね。日本のミニシアターは、映画の制作にも関わっているのが特徴。劇場と映画をつなげるこのサイトを、ARIと一緒につくれたという実感があります」(小野氏)
「行政機関ではありますが、当法人はコミュニケーションを大切にしています。一緒に事業を進める相談相手として、キャッチボールを繰り返しながら施策を進められるのは、まさに理想形。ARIと取り組みができたのは運が良かったです」(十河氏)
高精度の導線設計とデザインが奏功 SNS広告の反響もあり、3か月で全作品合計9万回再生に
予定通り、特設サイトは8月にリリースしましたが、それ以降も情報の追加やコンテンツの更新などがあったため、国際交流基金側でサイトの更新を行える仕組みを整えました。
「ユーザの使い勝手はもちろん、情報を更新する私たち配信側の使い勝手をも配慮したウェブサイトを作っていただけました。管理画面も、ITの深い知識を持たない一般職員にもわかりやすかったですね」(十河氏)
「完成したウェブサイトは、映画とミニシアター双方を紹介する内容で、それぞれ訴求したいポイントが整理されたページになりました。観たい映画にたどり着きやすい導線、そしてミニシアターに関わる人や地域の表情が伝わるデザインを、高精度で実現できたと思っています」(玄田氏)
ユーザ訴求施策の一環として、SNSのインフルエンサー広告もARIがサポート。アジアの映画に特化したインフルエンサーに投稿を依頼しました。
「ARIが海外インフルエンサーさんとうまく調整してくれたおかげで、6万9,000いいねという大きな反響を得た投稿もありました。それがきっかけとなり、私たちのアカウントのフォロワーが7,500から1万700にまで増えたことも収穫でした」(小野氏)
結果的に、2023年8月から10月末までの3か月を通して、全作品合計で約9万3,000回再生を達成。前回イベントよりも短い開催期間だったにも関わらず、およそ2倍の再生回数を記録しました。
「プロジェクトを通して思うのは、ARIのメンバーとは議論がしやすかったということ。こちらの説明の意図を酌んで、提案型の返答をしてもらえたのはありがたかったです。打合せも『熱』があって、ポジティブに議論できました。私たちは今後も、切り口を変えつつ、日本の映画文化を伝える事業を進めていきたいと思います」(玄田氏)